中学生になると、児童書だけではなく、ティーン向け小説や一般小説など読める本の幅がぐんと広がります。
恋愛、ミステリー、部活ものなど幅広い内容の本が楽しめるようになりますね。
その反面、たくさんの本の中から選ぶのが大変です。
読書感想文は、自分にとって一番「読みやすい」「書きやすい」が一番のポイントです。
課題図書やおとなの薦める名作本は確かに良いですが、自分が興味があって読みたい本を楽しく読めば必然的に感想文を書くのも楽になります。
ここでは、読書感想文におすすめの本をジャンルに分けて紹介します。
「楽しく読めそうだな」と感じる本を選んでみてくださいね。

子どもの頃から読書好きの元幼稚園教諭。
二人の子どもも読書好き。
実際に全て著者が読んでおすすめできるものを紹介しています。
ミステリーおすすめ本

オリエント急行の殺人 アガサ・クリスティー 著 ハヤカワ文庫
国籍も性別も年齢も様々な人たちが乗り込んだオリエント急行が雪で立ち往生。そんな中、一人の乗客が刺殺体で発見されます。
偶然乗り込んでいた名探偵ポワロが事件の謎解明に乗り出しますが、乗客全員には完璧なアリバイが。
果たして犯人はどこに?!
アガサクリスティーの代表作の一つとも言われる作品で、映像化もされており「タイトルは知ってる!」という方も多いでしょう。
「ミステリーで読書感想文?」と思われるかもしれませんが、ミステリーでも読書感想文はしっかり書けます。容疑者たちの背景や心理描写が丁寧で自分や社会の問題と重ねやすいうえ、名探偵ポワロの謎解きの論理的思考に驚かされることばかり。
特にこの作品は他のアガサクリスティー作品に比べて、中学生が結末に対して考察や感想を述べやすい作品です。
殺人事件が起きますが凄惨な描写はなく、児童書にもなっているので、中学生でも安心して読むことが出来ます。
犯人や結末が気になって一度読み始めるとページをめくる手が止まらないのもミステリー作品の特徴です。

我が家の子どもは中1の時に読みました。
先が気になって一日であっという間に読んでいましたよ。
本と鍵の季節 米澤穂信 著 集英社文庫
図書委員の男子高校生二人が主人公。
ある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねて来て、亡くなった祖父が遺した開かずの金庫の鍵番号を探り当ててほしいという……。
放課後の図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編収録。
短編のため、一話が完結するまでが短く読書経験が少ない子でも手に取りやすい作品です。
全編通して大きなストーリー構成になっているので、最後まで読んで更に広い世界が見える楽しさを味わうことが出来ます。
心は熱いけれど表面には出さないクールな思春期の友人関係や、小さな子どもではないけれど大人ほど自由ではない切なさが随所に感じられて中学生が読むと共感出来る部分が多いのではないでしょうか。
凄惨な事件が起きるミステリー作品ではなく人間の心理や思春期の友情に重きを置いた作品なので中学生でも安心して読むことが出来ます。
主人公たちがお互いや誰かを思う気持ちを自分の経験と照らし合わせて感想文を書いてみるのも良いですね。
世界でいちばん透きとおった物語 杉井光 著 新潮文庫
大御所ミステリ作家が癌の闘病を経て61歳で死去しました。そこで彼の子どもだが一度も父に会ったことのない主人公に連絡が入ります。
「その作家は『世界でいちばん透きとおった物語』というタイトルの小説を死ぬ間際に書いていたらしい。遺作として出版したいが原稿が見つからない。なにか知らないか」と。
そこで主人公は父の遺稿を探すことに。
父の遺稿を狙う別の何者かの妨害を乗り越えて、主人公がたどり着いた『世界でいちばん透きとおった物語』に隠された衝撃の真実とは。
主人公親子の関係を自身の環境や境遇と重ね合わせることができ、感想を述べやすい作品です。
「電子書籍化は不可能。紙の書籍ならではの衝撃作品」と話題になったことからも分かるように、
物語の内容と併せて衝撃を受ける書籍のため、芸術作品としての素晴らしさに感動した視点で感想文を書くのも面白そうです。
200ページちょっとの短さで普段読書をしない子でも読みやすい長さなのも嬉しいポイントです。
フィクションおすすめ本


ある晴れた夏の朝 小手鞠るい 著 文春文庫
原爆が投下されてから数十年後、広島と長崎に原爆を投下したのは果たして正しかったのか。
原爆肯定派と否定派に分かれた討論会がアメリカで開かれます。
日系アメリカ人や中国系、ユダヤ系など8人の高校生が悩み考えながら、チーム力、リーダーシップ、リサーチ力、語彙力など自分たちの力のすべてを結集し、2チームに分かれて数日間に渡り白熱の論戦を繰り広げます。議論の先に見えたものとは。
ノンフィクションかと思うほどの臨場感あふれる物語で、ページ数も180ページほどと短く、
読書に慣れていない子でも非常に読みやすいです。
原爆投下が正しかったのか否かについて、日本に暮らしていると答えは一つのように感じますが、一度そこから離れてこの物語を読むと新たな視点に驚きの連続です。
自分だったらどんな主張やアプローチをするのか、結論に対してどう感じるのか、これからの未来に何を願うのか、自分に何が出来るのか。
考えたことを感想文に書きやすい作品です。
親子で読んで感想をシェアしあうのも良い学びになりそうですね。
デトロイト美術館の奇跡 原田マハ 著 新潮文庫
アメリカデトロイト市の財政破綻により、市美術館が所有するピカソやゴッホなど珠玉のコレクションを売却するという話が持ち上がります。
全米で論争が過熱する中、デトロイト美術館を愛した一人の老人の情熱と小さな一歩が大きなうねりを生み、運命が動き始めます。
美術館のコレクションは守られるのか、コレクションを愛する人たちの想いは届くのか、実話を基に描かれた感動の物語です。
実際にあったデトロイト美術館の売却話を元にしているため、現実味を持って自分の身の回りのことを思い浮かべながら読むことが出来ます。
美術館のコレクションを守りたい気持ちと、財政破綻によって脅かされている市民の生活とを、政治という大きな観点と、個人の想いという小さな観点で考えて自分の意見を述べるのも面白そうです。
政治、美術、個人の思い出など、注目する観点がたくさんあり、読書感想文の書きやすい作品です。
ページ数が120ページと短く、短時間で読めるのも嬉しいですね。
博士の愛した数式 小川洋子 著 新潮文庫
80分しか記憶が続かない数学者と、家政婦とその息子がしだいに心を通わせる姿を描いた切なく暖かい奇跡の物語。
記憶を失った数学者にとって主人公はいつも「新しい」家政婦。どんなに嬉しいことがあって気持ちが通ったと思っても、いつもそれは博士の記憶には残りません。
博士と主人公の関係にやがて10歳の息子が加わり、ぎこちない日々が驚きと歓びに満ちたものに変わっていく奇跡の物語です。
記憶が無くなっていく博士に対して、主人公が持つ切ない感情や主人公の子どもが持つ素直な気持ち。
3人の世界で起きる感情のやりとりに共感しやすく、自分自身の感情も大きく動いて感想を書きやすい作品です。
博士が愛する数字や数式がたくさん出てくるのも楽しいポイントです。
数学が好きな子はもちろん、数学が苦手な子でも数学の世界の面白さや美しさに気が付く機会になります。
数式によって表現される博士の心情描写は、読み手が自分の感性で受け取れる余白があり、自分なりの感じ方を表現しやすいでしょう。
活版印刷三日月堂 星たちの栞 ほしおさなえ 著 ポプラ文庫
川越にある活版印刷所・三日月堂。店主が亡くなり長らく空き家になっていたところに、孫娘が戻ってきて店主となり営業を再開します。
依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する、そんな三日月堂には色んな依頼が舞い込みます。
活版印刷を通して心が解きほぐされていく依頼者の姿や、活版印刷と向き合う店主の姿に温かさや優しさ、元気をもらえる物語。
活版印刷ってなんだろう?と純粋に興味が湧き、活版印刷について調べたくなること間違いなしです。
ストーリーに注目して誰もが持つ葛藤をテーマに自分の経験を交えながら感想を書くことが出来ます。また、活版印刷の歴史や現在について調べたことや、失われつつある職人の技術に注目しても面白そうです。
様々な観点の中から、自分に合った部分をクローズアップして感想文を書くことができる作品です。
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ 武田綾乃 著 宝島社文庫
かつては強豪校だったが今はなんとなくパッとしない、北宇治高校吹奏楽部が舞台の物語です。
新しく赴任した顧問の厳しい指導のもと生徒たちは着実に力をつけていきますが、
ソロを巡っての争いや、勉強を優先し部活を辞める生徒も出てくるなど、波瀾万丈の毎日が繰り広げられます。最後にたどり着いたコンクールの結果は?
少女たちの心の成長を描いた青春エンタメ小説です。
テレビアニメ化もされた青春小説で、セリフが多く普段読書をしない子でも読みやすい作品です。
部活動を題材にした青春小説のため、吹奏楽部の子だけではなく部活動を頑張っている子は自分と照らし合わせて感じたことを感想文に書きやすいでしょう。
主人公はもちろん色々な立場の人の気持ちが手に取るように感じられるため、実際の生活では気が付かなかったことにも気が付く機会になりますね。そういった気付きを感想文に盛り込むのもおすすめです。
宙わたる教室 伊予原新 著 文藝春秋
東京・新宿にある都立高校の定時制が舞台。
様々な事情を抱えながら「もう一度学校に通いたい」という思いのもとに集った生徒たちは、理科教師を顧問として科学部を結成し、学会で発表することを目標に、「火星のクレーター」を再現する実験を始めます。
勇気をもって人生の扉を開けて進もうとする人たちがたどり着いた先にあるものとは…。
NHKでドラマ化され、人気を博した作品の原作小説です。
定時制高校が舞台のため、登場人物の年齢、経歴も様々。
自分の前に伸びる道は一本道ではなく、無数の道があること、通り過ぎてもいつでも戻れることを感じられる物語で、中学生の視野が広がる機会になる作品です。
自分の置かれている環境と併せて共感する子もいれば、出会ったことのない世界や価値観に驚く子もいるでしょう。
これからの自分を想像しながら、素直な想いを感想文に表現するのもおすすめです。
この夏の星を見る 辻村深月 著 角川書店
舞台はコロナ禍に突入した2020年の日本。
天文部で活動している高校2年生の女の子、新入生の中で男子が一人だけなことにショックを受ける中学1年生の男の子、コロナ禍で県外のお客を迎えていることを周りから批判的に見られやりきれない思いを抱える長崎五島列島の旅館の娘で高校3年生の女の子、それぞれが主人公。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で、大人たち以上に複雑な思いを抱える全国の中高生たち。日本の3か所でそれぞれに存在していた個人の物語が「星を見る」ことをきっかけにして繋がり広がっていく様子が描かれています。
哀しさ、優しさ、あたたかさに溢れた物語。
同年代の主人公たちが置かれている境遇に、自分を照らし合わせながら読むことができる作品です。
大好きなものを諦めなければいけなかったあの時代に、少しでも前に進もうと奮闘する主人公たちの姿に感じることが多くあるでしょう。
当たり前の毎日があることのありがたさや夢に向かって試行錯誤することの尊さを、自分と重ね合わせて感想文に表現するのも良さそうですね。
私たちの世代は 瀬尾まいこ 著 文藝春秋
新型コロナウイルスによる休校が始まった2020年の春、小学3年生だった2人の少女のその時とその後を描いた物語。
母子家庭の冴は中学生になりイジメに遭い、教育熱心な母に育てられた心晴は感染症が落ち着いた休校明けに学校に行くきっかけを失い家に引きこもってしまいます。
やがて周囲の人の助けを得て二人にも就職の時期が訪れます。
マスク世代とレッテルを貼られてしまった世代の、これまでとこれからを描いた物語。
2025年現在中学生の子は、この二人の主人公とまさに同世代。
小学生の時になんとなく感じた理不尽さや閉塞感、おとなへの違和感など主人公たちに共感しながら読書をすることが出来そうです。
終始自分の物語のようで、中学生にとって読みやすい作品だと思います。
主人公たちが歩んでいく過程で、自分と照らし合わせて共感したことを感想文に表現するのも良いでしょう。
成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈 著 新潮社
主人公は成瀬あかり。物語はあかりが中学生2年生の時に始まります。
「200歳まで生きる」と型破りな目標を掲げ、周囲からは独特と取られる行動をとるあかり。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通いテレビ中継に映り続けたり、M-1に挑戦したり、自身の髪で長期実験に取り組んだり。
幼馴染に支えられながら、周りに左右されず自分の信じた道を力強く突き進んでいく、
予測不可能でピュアなあかりの6年間の物語。
自分の信じた道を誰の目も気にすることなく突き進んでいく主人公の言動に驚きながらも、こんな友達がいたらいいな、とか、自分もこんな風に生きてみたいな、と思う気持ちが募ります。
自分の道をひたすら突き進みながらも、ただのわがままな人に映らない主人公の良さを見出して感想文に表現するのも面白いでしょう。
自分と同世代の主人公に刺激を受けること間違いなしです。
八本目の槍 今村翔吾 著 新潮文庫
時は戦国時代。「賤ケ岳の七本槍」と呼ばれた七人の武将。豊臣秀吉の元に集った七人はそれぞれ別々の道を進みます。出世をする人、しない人。時代を経るごとに変わっていく関係性や立場。そんな七人の物語の真ん中を貫くように存在する石田三成。
歴史上嫌われ者として語られることの多い、石田三成が見ていた世界とは。
七本槍から見た三成の姿とは。
賤ケ岳の七本槍と呼ばれた武将の人生をオムニバス形式で描きながら、石田三成の本当の姿をあぶりだす感動の物語です。
史実を元にしてその隙間を作者が魅力的に埋めている歴史小説で、フィクションの部分も多いですが、今まで見えていた石田三成とまた違う一面が見えて来て、本当の歴史はどんなだっただろうと想いを馳せるのが楽しいです。
様々な制約の中で運命が交錯する様子を、これからの自分と照らし合わせて考えてみるのも良いでしょう。
歴史が好きな中学生には特におすすめの物語です。
ノンフィクションおすすめ本

赤と青のガウン 彬子女王 著 PHP文庫
天皇陛下のはとこにあたる彬子女王がオックスフォード大学に留学していた日々が綴られた留学記です。
皇族の方が普段どのような生活を送っているのかを垣間見られ、留学記という側面以外にも興味が持てる作品です。
日本のプリンセスがイギリスでこんな体験をしていたのかと驚くエピソードや、自分と変わらない一人の人間なんだなと思うエピソードもあって、終始興味深い読書時間になるでしょう。
海外での学生生活や仕事を志している子はもちろん、そうでない子も、自分で目標を持ち慣れない環境で試行錯誤しながら生活されている彬子女王の奮闘ぶりに自分のこれからを重ね合わせることでしょう。
中学生でも読みやすく、自分の今や将来と照らし合わせながら感想文が書きやすい作品です。
青い光が見えたから[16歳のフィンランド留学記] 高橋絵里香 著 講談社
小4でムーミンの故郷フィンランドに憧れ、高校生からの留学を目指すも、留学目前の中学校生活で自分を見失い挫折を経験する著者。
そこからなんとか抜け出して16歳で単身フィンランドへ。
言葉も習慣も何もかも分からないところからスタートし、たくさんの人に支えられながら高校生活を送った著者の4年間の記録です。
著者が小中学生時代の話から始まるため、想像しやすく読みやすいです。
多感な時期に持つ大人への違和感や反感を記してあるため、中学生も共感しながら読むことができるでしょう。
日本の教育制度から抜け出し、全く新しい世界へ飛び込んだ著者の奮闘ぶりはおとなが読んでも尊敬と憧れを感じます。
これから自分の進路を選択していく中学生にとって、視野が広がるきっかけとなりそうです。
フィンランドの学校生活やフィンランド人の考え方なども含めて、中学生が今の自分や自分の置かれている環境などと比較して感想文を書きやすい作品です。
池上彰の君と考える戦争のない未来 池上彰 著 理論社
戦争とは何か、これまで世界が経験してきた戦争とは、なぜ戦火はやまないのか。
過去の戦争について池上彰さんが分かりやすく解説しています。
過去を踏まえた上で、今の戦争がどういう原理で起きているのか、なぜやめられないのかを考え、戦争のない未来をつくっていくにはどうすればいいかを考えるきっかけになる一冊です。
池上彰さんが10代の子向けに戦争を説明しているため、非常に分かりやすく読みやすいです。
物語の読書が苦手な子にもおすすめです。
資源、領土、宗教、核、政治、ビジネスなど、様々な視点で戦争を考えるきっかけになり、多面的に物事を捉える必要性を学ぶことが出来ます。また、歴史を知ることの重要性も感じることでしょう。
この本を読んで、自分だったらどう考えるか、どんな未来を作っていきたいのかを考えて感想文にするのも良さそうですね。
ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー ブレイディみかこ 著 新潮文庫
イギリスに住む著者の長男が11歳で地元の中学校に入学してからの一年半が記されています。
人種も貧富の差も様々な地元の中学校で長男が目の当たりにした多様性。
葛藤を感じるたびに母子でともに悩み、考え乗り越えていく日々が綴られています。
学校生活や家庭での親子のやりとりが中心に記されているので、中学生にも読みやすく普段読書をしない子や、小説が苦手な子にもとても親しみやすいです。
日本でも多様性について学んだり実感したりする機会は増えましたが、まだまだ知らない世界がたくさんあるのだと実感させられるこの本。衝撃を受けることもたくさんあるでしょう。
自分と同年代の子がイギリスで感じていることや、イギリスの中学校のシステムなどと、
今の自分や自分を取り巻く環境を照らし合わせて感想文を書くのも面白そうです。
QuizKnock学びのルーツ QuizKnock 著 新潮社
YouTubeでも人気の知識集団QuizKnockのメンバーの学びのルーツを知ることができる一冊。
テレビなどで活躍する人気メンバーの幼少期の経験や勉強に目覚めたきっかけ、進路決定の理由などが語られています。
文章が語り口調で書かれているため、非常に読みやすく、普段読書をしない子でも簡単によめるのが嬉しいポイント。
勉強そのものではなく、彼らが好きだったことや苦手だったことが書かれているため、自分と照らし合わせやすく、自分のことを見返す良い機会になります。
一人ではなく、複数人の経験が語られているのもポイント。
自分の考えと似ている人や正反対の人など、色々な価値観に触れて考えたことを感想文にするのも良さそうですね。
続 窓ぎわのトットちゃん 黒柳徹子 著 講談社
1981年に刊行されベストセラーになった『窓ぎわのトットちゃん』の続編。
前作『窓ぎわのトットちゃん』が、黒柳さんが小学1年生のときに転校した東京の学校で出会った先生や友人たちとの思い出が描かれているのに対して、本作は小学生になる少し前、戦前直前の時代からNHK専属女優になり活躍されるまでの時代が記されています。
壮絶な戦時下でもたくましく生きた様子が手に取るように感じられる作品です。
自分と同年代の子が戦後の日本をどう生きていたのかを知ることができ、中学生にも興味深く読むことができるでしょう。
時代が変わっても共通することと、今では想像がつかないことなど、感じたことを感想文に表現するのもおすすめです。
大変な状況でもパワフルに楽しさを忘れず前へ突き進んでいったトットちゃんの姿に、自分を照らし合わせて感じたことを文章にするのも良さそうですね。
ファンタジーおすすめ本

魔女の宅急便 角野栄子 著 角川文庫
ジブリアニメでもおなじみ『魔女の宅急便』の原作小説。
人間と魔女が結婚をして生まれた子どもが女の子の場合、魔女として生きていく決心がついたら13歳の年の満月の夜にひとり立ちをします。
ひとり立ちをすると、自分の家を離れて魔女がまだいない町や村を探し、たった一人で暮らし始めます。
この物語は魔女の女の子キキのひとり立ち前から、その後1年間の暮らしと成長を描いています。
主人公のキキが13歳の一年間を描いており、中学生には親しみやすい物語です。
映画のキキは物わかりの良い女の子のイメージがありますが、原作のキキはもっと等身大。
お母さんに反抗したり、心細くなったり無邪気だったり。
年相応の悩みに直面して葛藤している姿は中学生に共感を得られやすいのではないでしょうか。
等身大のキキと自分の姿を重ね合わせて感じたことを感想文にするのも面白そうです。
これは王国のかぎ 萩原規子 著 角川文庫
15歳の中学生の女の子が主人公。
失恋し泣きつかれて眠り目が覚めたら…なんとそこはアラビアンナイトの世界だった!というところから始まる物語。
偶然出会った青年とともに、数々の危険を潜り抜けながらアラビアンナイトの世界を旅します。
自分が自分でいることが嫌になった少女がアラビアンナイトの世界で出会ったものとは。
15歳の少女のちょっとかわった大冒険の物語。
主人公が失恋するシーン、そして自分が嫌になってしまう冒頭のシーンは、多くの人が共感することでしょう。順風満帆な主人公ではないところに親しみやすさがあります。
そんな主人公がアラビアンナイトの世界に迷い込み一人の青年に出会い、旅をしていく中でどんどん成長していく姿にワクワクします。
等身大の主人公の成長と自分を照らし合わせ感想文を書くのも面白そうですね。
ファンタジーの世界が好きな子には特におすすめです。
かがみの孤城 辻村深月 著 ポプラ文庫
2022年にアニメ映画化された作品。
学校でのいじめが原因で家に閉じこもるようになった主人公。
ある日主人公の部屋の鏡が輝きだします。その光を潜り抜けた先のあったのはお城。
そこには主人公と似た境遇の7人が集められており、彼らには一つの目的が示されます。
「城に隠された願いを叶えてくれる鍵を探すこと」
鍵は見つかるのか、だれが見つけるのか、だれの願いが叶うのか。
ラストには驚きと大きな感動が待つ物語。
登場人物の年齢が中学生と近く、置かれている環境や会話などが実際にイメージしやすいです。
7人の子が城に集められた理由など分からないことも多く、ファンタジーながらミステリーの要素も強く常に先が気になる展開のため、上下巻の物語ながら一気に読めてしまうほど面白い。
読み進めるごとに明らかになる事実に驚きの連続です。
この物語を読んで、自分のこれからの生き方や、辛くなった時にどんなことを思うかなどを感想文に書くのも良いでしょう。
未来ある子どもたちにぜひ読んで欲しい物語です。
精霊の守り人 上橋菜穂子 著 新潮文庫
映像化、舞台化もされている作品。
文化人類学者でもある作者が、神話や伝承などを丁寧に構築した架空の世界を舞台にしたファンタジー小説です。
女用心棒の主人公がとある王国の皇子を、父帝が仕掛けてくる刺客や異界の魔物から体を張って守ります。
皇子が命を狙われる原因になったのは、その体に精霊の卵を宿したから。その卵がかえると大干ばつが起きるといいます。
百戦錬磨の女用心棒と、勝ち気でまっすぐな少年皇子の物語です。
主人公が30歳の女性で、非常に強い。特別な事情を抱えた皇子を守り抜くかっこよさが際立つ物語。
架空の世界ながら、神話や伝承の裏付けがしっかりされていて政治の動きも楽しめる作品です。
生まれながらにして皇子である少年の苦悩や覚悟、百戦錬磨の女用心棒が抱えているであろう過去や葛藤が手に取るように感じられ、読みながら皆が幸せになる方法はないのだろうかと考えてしまいます。
そんな気持ちの葛藤を感想文に表現するのも面白いでしょう。
立場によって正しい判断や選択が異なってくることも随所で感じられ、実際の国内の政治や地政学にも結び付けて考えることが出来そうです。
ロングセラー名作おすすめ本

おちくぼ姫 田辺聖子 著 角川文庫
貴族のお姫さまなのに意地の悪い継母に育てられ、落ち窪んだ部屋に一人ぼっちで暮らす「おちくぼ姫」。召使い同然の粗末な身なりで一日中縫い物をさせられています。
そんなおちくぼ姫と、都でも評判の青年貴公子のラブ・ストーリー。
千年も昔の平安時代の日本で書かれた、王朝版シンデレラ物語。
若い読者のために現代訳された作品です。
平安時代の物語ながら、現代語訳されているのに加えて時折当時の習慣の説明もあるため難しくなく楽しめるのが嬉しいポイントです。
今の時代にもたびたび映画化やアニメ化されるシンデレラストーリーが1000年も昔の人にも楽しまれていたことに驚かされます。
200ページほどの物語で、展開もスピーディーなため短時間で読めるのも嬉しいですね。
当時の恋愛模様や生活の様子、人々の価値観など、今とは全然違うところや、反対に時代が変わっても変わらないものを見つけて感想文に表現するのも面白そうです。

我が家の娘は小6の時に読みました。
恋愛物語ですが、子どもにも安心して読ませることが出来ますよ。
あしながおじさん J・ウェブスター 著 新潮文庫
孤児院で育った主人公の元にとびきりのチャンスが舞い込みます。名を名乗らない紳士が奨学金を出して大学に通わせてくれるのだと言います。そのための条件はたった一つ。
「毎月手紙を書いて送ること。」
主人公はこの紳士を「あしながおじさん」と呼び、日々の様子を綴った手紙を送り続けます。
最後に待っている結末とは…。
手紙を基本に成り立つ物語で、書簡体小説と言われます。
主人公からあしながおじさんに向けてのお手紙で全編描かれているため、読者は主人公の気持ちだけを知って読み進めていきます。
その物語が最後の結末に達した時、手紙の中に確かに表れていたあしながおじさんの存在に気が付き幸せな気持ちになります。
書簡体小説のもつ可能性や、表現することの面白さを感じられることでしょう。
物語の内容自体の感想だけではなく、言葉の持つ力に想いを馳せるもの面白そうですね。
クリスマス・キャロル ディケンズ 著 新潮文庫
ケチで冷酷で人間嫌いの主人公が、クリスマスイブの夜幽霊に連れられて知り合いの家を訪問します。
そこで自分の生きてきた過去・現在、そしてこれから待ち受けているであろう未来と向き合い、自分の生き方を見出していく物語です。
190ページほどの物語で短く読みやすいのが嬉しいポイント。
この話の中でとびきり嫌な奴として描かれている主人公ですが、彼の嫌な部分は、現代の社会に照らし合わせると多くの人が当たり前にしていることでもあります。
何でも無駄を省いて行動する、他人には干渉しない、建設的に考えて得を取るなど…。
主人公の嫌な部分を客観的に眺めながら、今一度自分や周囲のおとなを見返し考えたことを感想文に述べることが出来そうです。
最後には心あたたまる、クリスマスにぴったりの物語です。
地底旅行 ジュール・ヴェルヌ 著 岩波文庫
とあるきっかけで過去の錬金術師が遺した暗号を発見した教授。それが地球の中心へと向かう道筋を示したものだと分かり、地底探検へ出発します。
未知の地底で待ち受けているものとは?果たして教授一行は無事に地上へ生還できるのか。
トラブル続きの地底旅行にハラハラしながらも、同時に未知の世界にドキドキワクワクし気持ちが高鳴る物語です。
東京ディズニーシーのアトラクション「センター・オブ・ジ・アース」の原作としても名高い、ジュール・ヴェルヌの歴史的名作冒険ロマン小説です。
冒険メンバーのキャラクターが秀逸なジュール・ヴェルヌの作品の中でもこの地底旅行のメンバーのバランスは最高です。
変わり者の教授。その教授に無理やり引っ張られて嫌々地底に行く甥。屈強で何事にも動じない案内人。
地底で出くわす様々な困難に個性豊かなメンバーが自分の持ち味で向かっていく姿が面白い。
地底深く潜ることで太古の地球に想いを馳せることとなり、時間旅行をしている感覚も味わえます。
想像をはるかに超えた状況に陥った時の面白さはピカイチ!お気に入りの場面の感想を述べてみてはいかがでしょうか。自分の思い描く地底や地球に想いを馳せて感想を書くのも面白そうですね。
十五少年漂流記 ジュール・ヴェルヌ 著 新潮文庫
15人の少年たちだけを乗せた船がひょんなことから荒海に出てしまいます。
なんとか岸辺に漂着しますが、そこは未知の土地。少年たちは時に対立しながら知恵を絞って生き抜こうとします。
少年たちがたどり着いた場所とは。果たして無事に家に帰れるのでしょうか。
SFの祖ジュール・ヴェルヌによる少年の冒険小説です。
漂着した少年たちの年齢が中学生と同世代の子たちなので、自分と照らし合わせてイメージしながら読むことができるでしょう。
豊かな知識と経験の必要性や、個性や得意なことの違う人たちがいることの素晴らしさを感じる場面がたくさんあります。
自分だったらどんなことができるのか、どうするのかを考えて感想文に書くのも面白そうですね。
モモ ミヒャエル・エンデ 著 岩波少年文庫
町はずれの円形劇場のあとに迷い込んだ不思議な少女モモ。
町のおとなもこどももモモに話を聞いてもらうと幸せな気持ちになります。
モモにも大好きなお友だちが出来、貧しいながらもみんな心豊かに暮らしていました。
そこへ「時間どろぼう」の灰色の男たちの魔の手が忍び寄ります。
時間を奪われた町の人たち、モモのお友だちの生活は一変。
果たしてモモはみんなの時間を取り戻すことが出来るのでしょうか。
ミヒャエル・エンデの不朽の名作です。
この物語を読むと、いかに自分が時間に追われて大事なものが見えなくなっているのかを感じます。大人が読むとより切実に「時間とは」「豊かさとは」を考えさせられる物語です。
不思議な少女モモが持つ人を幸せにする力や、友だちとの豊かな時間を感じて、自分が思うことや、自分が大事にしたいものを考えて感想文に表現してみてはいかがでしょうか。
おわりに

ちょっと、もしくはかなり苦手な人も多いであろう読書感想文。
読書感想文は、どの本を選ぶかで書きやすさが決まってきます。
自分と境遇が似ているもの、自分のイメージしやすいもの、自分の興味があるものの中から、
ご本人にとって「読みやすく書きやすい」ものを選んでみてくださいね。
