「そろそろ赤ちゃん絵本じゃ物足りないかな?」
「少し長めの物語に興味が出てきたみたい」
「どんな物語が楽しめるんだろう」
幼稚園に入園したり、保育園でも自分よりも下の子が増えたり、
お兄さん、お姉さんの自覚が少しずつ芽生えてくる3歳。
成長に伴って少し長めの物語も楽しめるようになってきます。

幼稚園では3歳の担任をすることが多かった著者。
赤ちゃんを卒業して大きくなりたい気持ちでいっぱいの3歳!
かわいくて大好きです!
先生時代も親になってからも、3歳児とたくさん本を読んできた著者が
おすすめの絵本を紹介します。

年齢はあくまでも参考です。
これを読まなくてはいけない、これくらい理解できなくてはいけない、
という考えは捨てて、
目の前のお子さんに合った、お子さんが気に入る絵本を読んであげてくださいね。
3歳児に合った絵本の選び方を知りたい方はこちらの記事もごらんください。
選ぶときのポイントを丁寧に解説しています。
3歳児の特徴
言葉が豊かになり、周りの環境との関わりが増えてくる3歳。
好奇心や探求心も旺盛になり、自分でやりたい気持ちが大きくなります。
一方で、まだまだ甘えたい気持ちがたくさんあり、行ったり来たりを繰り返します。
これまでの赤ちゃん絵本から、少し長めの物語も楽しめるようになるのも3歳。
自分の気持ちが行ったり来たりする経験の中で、絵本の登場人物の少し複雑な想いも
感じることができるようになります。
自分以外の誰かに共感したり、自分を投影したりして絵本の世界を楽しみます。

幼稚園や保育園などの集団では、
同じ言葉やリズムの繰り返し絵本をみんなで楽しむことも。
絵本の世界がごっこ遊びに発展することもありますよ。
くすっとわらえる絵本
わにわにのおふろ 小風さち 文 / 山口マオ 絵 福音館書店

わにのわにわにはおふろがだいすき。
じぶんでお湯をためて、おもちゃを浮かべて…。
おふろをめいっぱい楽しむわにわに。
子どもにもなじみ深いお風呂をわにわにが楽しんでいる様子がとっても楽しい!
わにわにに一気に親近感を感じながら楽しめる物語。
お風呂を楽しむわにわにの姿には共感と憧れの気持ちが募ります。
わにわにの真似をしてお風呂に入る子続出間違いなしです!

「ずるずり、ずるずり」
「きゅるり きゅるり きゅるり」
「じょろろーん!」
たくさん出てくる擬音が子どもは大好き!
すぐに覚えて一緒に口ずさみます。
きゅうりさんあぶないよ スズキコージ 作 福音館書店

きゅうりさんが歩いていると…
「きゅうりさんあぶないよ」
と町の動物たちに次々に声を掛けられ、帽子やベルトなど色々なものをもらいます。
みんなにもらったものを身に着けてきゅうりさんがたどりついた先にあったのは…!?
「きゅうりさんあぶないよ」の繰り返しでお話が進んでいき、
きゅうりさんの装備がどんどん増えていくのが面白い!
結末がどうなるか分からないドキドキ感も味わえます。

おとなが気が付かないきゅうりさんの変化に、
いち早く気が付く子どもの様子が印象的でした。
へんなどうぶつみつけたよ 佐々木マキ 作 絵本館

ナナコブラクダは、こぶがななつ。
カラテカメレオンは、空手5段の腕前。
ほかにも不思議な動物がたくさん登場します。
へんな動物の生態につっこみながら楽しめる絵本です。

へんな動物が出てくるたびに大笑いしてずっこける子どもの姿が印象的でした。
絵本を読んだ後は、自分たちでへんな動物を生み出す遊びが流行したことも。
からだがかゆい 岩合日出子 文 / 岩合光昭 写真 福音館書店

動物の写真を撮り続ける写真家、岩合光昭さんの写真で出来ている絵本です。
地球の色々な所で、「からだがかゆい」と体をかいている動物たちの姿が映っています。
かっこいい動物も、かわいい動物も、ちょっぴり怖い動物も、
自分たちと同じで「からだがかゆい」と戦っている姿がかわいい。
動物によって違うかきかたを見て、動物の体の仕組みにも興味がわいてくる一冊です。

出てくる動物の体のかきかたを真似する子どもが続出しました。
自分でやってみて自分と動物の体の作りが違うことを感じることも出来ました。
表紙のペンギンのかきかたも人間には難しいですね。
短いおはなし
ねずみくんとゆきだるま なかえよしを 作 / 上野紀子 絵 ポプラ社

雪が降って大喜びのねずみくんは雪合戦をしようと雪玉を投げます。
すると…もっと大きな雪玉が帰ってきて…。
今度は雪だるまを作るねずみくん。
でもやっぱりもっと大きな雪だるまが出現。
お友だちに負けずに次から次へと挑戦するねずみくんを応援したくなるおはなし。

「お友だちより上手になりたい」
「お友だちより上手に作りたい」
という子ども自身も感じたことのある気持ちが描かれています。
ねずみくんに共感しながら、自分以外のお友だちの気持ちにも想いを寄せられる絵本です。
おにぎりくんがね・・ とよたかずひこ 作 童心社

「にぎにぎ」「にぎにぎ」「にぎにぎ」
と三人のおにぎりくんが自らおにぎりをにぎっていきます。
誰かににぎられるのではなく、自分で具を「パクっ」と口に入れ、自分で海苔にまかれちゃう姿がかわいい。
上手にできた具入りおにぎりくんが嬉しくなって踊り始めて…。
おにぎりくんの真似をしたくなるそんなかわいいおはなし。

「たべてみな♪」
「しんぱいごむよう!」
おにぎりくんと一緒に口ずさみながら楽しめます。
わたしのワンピース にしまきかやこ 作 こぐま社

1969年の刊行から子どもたちの絶大な支持を集めて今もなお愛されるロングセラー絵本。
ある日、空から真っ白な切れが落ちてきます。
うさぎさんは、その布でワンピースを作ることに。
出来たワンピースでお散歩しているとワンピースが素敵な模様に大変身!
「ミシンカタカタ、ミシンカタカタ」
「ラララン、ロロロン、ランロンロン」
とかわいいリズムをうさぎさんと一緒に口ずさみたくなる物語。
色彩がとても優しく鮮やかで読んでいて明るい気持ちになります。

うさぎさんのワンピースが次はどんな模様になるのか
子どもたちはワクワク!
幼稚園では実際に「こんなワンピースあったらいいな」
と絵に描いて楽しむ姿も見られました。
きつねとねずみ ビアンキ 作 / 山田三郎 絵 福音館書店

ロシアの作家ビアンキの作品。
きつねのだんながやってくるとそこには、巣穴を建設中のねずみたち。
ねずみを捕まえたいきつねのだんなと、
きつねのだんなから隠れるために巣穴を作ったねずみとの攻防戦が描かれています。
きつねのだんなとねずみのやり取りが軽快ながら緊張感に溢れ、読んでいてドキドキ。
ねずみの巣穴が横から見たように描かれていて地面の中の部屋がよく見えるのが楽しいポイント。
トムとジェリーのような攻防戦にドキドキしながら、自然の営みを感じることのできる素敵な作品です。
イラストは本物の動物の持つ体のしなやかさがよく感じられますが、どこか愛嬌もあって親しみやすいです。

著者が特にお気に入りの絵本です。
幼稚園では、きつねとねずみの緊迫感のあるやりとりに息をのむ子どもたちの姿が印象的でした。
派手でないイラストだからこそ引き立つ動物の体のしなやかさややりとりの緊迫感が大好きです。
そら はだかんぼ! 五味太郎 作 偕成社

らいおんくんがお風呂に入ります。
「おふろにはいるなら、はだかんぼにならなくちゃ!」
ということでらいおんくんが服を脱ぎ始めるのですが…
「らいおんが服を脱ぐってどういうこと!?」
さて、この先らいおんくんはどうなっていくのでしょう?
子どもに人気の五味太郎さんの絵本で、3歳から小学生まで笑って楽しめる絵本です。
ちょっぴりびっくりする仕掛けになっているので、冗談の概念が育ってきた3歳くらいから読むのがおすすめです。

予想もしていなかった展開に驚きっぱなしの絵本です。
でも、五味太郎さんの絵本なので安心して読めますよ。
ちょっぴり長めのおはなし
おおきなキャベツ 岡信子 作 / 中村景児 絵 金の星社

長年小学二年生の教科書に掲載されており、読者の声から絵本になった物語。
ずらりとキャベツが並んだ畑の中に一つだけぐんぐん大きくなるキャベツが。
あっという間に大きくなったキャベツに子どもたちは大喜び。
キャベツにのぼって滑ったりかくれんぼをしたりして遊びます。
すると突然キャベツの葉っぱが丸まりだして…子どもたちが閉じ込められてしまいます。
子どもを助け出すためにたくさんの力強い助っ人が登場!
子どもたちは無事に助け出されるのかドキドキしつつ、助け出そうと奮闘する助っ人たちの様子も存分に楽しめる物語です。

たくさんの助っ人がキャベツと格闘するシーンは見ごたえ満点!
大きなキャベツに群がるたくさんの助っ人の細かな描写は見ていてワクワクします。
幼稚園では、実際に子どもたちがキャベツに見立てた布に巻かれて、お友だちが助け出すというキャベツはがし遊びにも発展しました。
想像力がかきたてられる物語です。
もりのなか マリー・ホール・エッツ 作 福音館書店

アメリカの作家エッツによる絵本で、1963年の刊行から60年以上もの間多くの子どもたちに愛されている名作絵本です。
ある日、ぼくは紙で作った帽子を被り、新しいラッパを持って森へ散歩に出掛けます。
そこで出会ったのがおおきならいおん。
ぼくのラッパで目を覚ましたらいおんは「ついていっていいかい?」と聞きます。
らいおんは髪をとかすと、ぼくの散歩についてきました。
こうしてぼくは、もりのなかを散歩します。
その中で出会う動物たちが次々とぼくの散歩についてくる。
どんどん増えていく動物たちとぼくの愉快なさんぽの様子に心が躍ります。
そして散歩の終わりに待つものとは…。
本屋さんや図書館で華やかな色彩の絵本が並ぶ中、モノクロのイラストで手に取りにくく感じる方がいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、この本、信じられないくらい子どもが大好きです。
モノクロの絵本の持つ豊かさと、子どもの想像力を存分に感じられる絵本です。
モノクロで興味がなさそうな場合、
お父さん、お母さんなど読み手の方が音読してみてください。
子どもが横にいなくても大丈夫です。
子どもに声が聞こえる場所で音読します。
この物語は、ぼくが動物に出会い動物とのやり取りがあって、動物がどんどんぼくに付いてくるという繰り返しで、少し耳に挟むと次が気になってきます。
また、言葉選びも秀逸で言葉を聞いているだけで想像が広がります。
興味を持たなかった子も、絵が見たくなり近づいてくるかもしれません。
そうしたらぜひ、もう一度読んであげてくださいね。

静かな世界の中に感じられる愉快さや楽しさが想像をかき立ててくれる物語。
我が家の子は2歳の時にこの本が大好きでいつの間にか言葉をすべて覚えていました。
それくらい、この世界に入り込んでぼくの見た世界を体感していたのでしょう。
うんちしたのはだれよ! ヴェルナー・ホルツヴァルト 作 / ヴォルフ・エールブルッフ 絵 偕成社

ある日のこと。
もぐらくんが地面に顔を出したら大事件が発生します。
もぐらくんの頭の上にうんちが落ちてきたのです。
怒ったもぐらくんはうんちを落とした犯人を見つけに行きますが…。
まさかの出来事から始まるこの絵本。
冒頭から子どもの心がわしづかみにされること間違いなしです。
もぐらくんが犯人探しをする中でたくさんの動物のうんちが登場。
どれも本格的でうんちの勉強にもなります。

繰り返しのリズムがあり軽快で、
一体犯人は誰なんだろうとドキドキワクワクしながら楽しめます。
三びきのヤギのがらがらどん マーシャ・ブラウン 作 福音館書店

ノルウェーの昔話で、日本では1965年に刊行されました。
多くの子どもに愛される名作ロングセラー絵本です。
ちいさなやぎのがらがらどんと、ちゅうくらいのやぎのがらがらどんと、おおきなやぎのがらがらどんは、ある日山の草場にお食事に出掛けます。
ところが、そこに向かう途中の谷川に橋があって、その下には巨大なトロルが待ち構えています。
3匹は無事に山の草場にたどり着けるのでしょうか?
「三びきのやぎのがらがらどん 怖い」と検索ワードにもあがるお話で読むのを躊躇している方もいらっしゃるかもしれませんね。
どこが怖いかというと、がらがらどんが大きなトロルを八つ裂きにしてしまうところでしょうか。
絵でも表現されていますから、ドキドキする子もいるでしょう。

我が家の子ども二人のうち、一人は「怖い」と言って読まず、
もう一人は怖いながらも楽しんでいました。
なぜ、自分たちが食事をするために橋を通るのに、そこに住んでいるトロルをやっつけてしまうのか、に疑問を持つ子は多いです。
反対に、トロルだってそこを通るだけなのに、ヤギを食べようとするのだから同じだよね
という意見もあります。
これこそが、絵本や本の良さです。
誰かが示した結論が書いてあるわけでも、善悪が示されているわけでも、教訓が明示されているわけでもない。
そんな中で、一人一人が自問自答して自分の考えや感情を受け止めていくことができるのが物語の良さでもあります。
読後に感想を求めることは、著者自身は行いませんが、
もし子どもからアクションがあった場合には親子でお話してみてください。
子どもなりの考え方を知ったり、お父さんお母さんの考えを話す良い機会になります。
もちろん、怖がっている子に無理やり読ませないようにしてくださいね。
ぶたのたね 佐々木マキ 作 絵本館

「はしるのがとてもおそいおおかみがいた」
びっくりする一文で始まる絵本。
ぶたが食べたいのに、ぶたよりも走るのが遅いおおかみは一向にぶたを捕まえられません。
どうしてもぶたが食べたいおおかみの作戦はいかに…?
昔話の世界では悪者になることが多いおおかみに子どもたちの同情が集まるという、
なんとも不思議な物語です。
苦手なことやできないことがあってもへこたれずに次の手を考えるおおかみ。
佐々木マキさんの明るく楽しいイラストと相まって、ついつい応援したくなります。
続編の「また ぶたのたね」「またまた ぶたのたね」も併せて楽しんでみてはいかがでしょうか。

幼稚園では子どもたちが、
笑いながらも、温かい目でおおかみを見守る様子が見られました。
苦手なことは誰しも心当たりがあって、ついつい応援したくなるのかもしれませんね。
はっきよい畑場所 かがくいひろし 作 講談社

野菜たちのおすもう畑場所が開幕!
かわむけん出身かれえ部屋たまねぎのたまね錦、しましまけん出身でざあと部屋すいかのすい海など、
個性豊かなおすもうさんが大集合!
野菜たちのプロフィールだけでもとても楽しい!
その上、本格的な取組表や実況者もいておすもうの雰囲気がまんてんです。
かがくいひろしさんが生み出すかわいくてユーモアあふれる野菜たちの取り組みに親子で夢中になること間違いなし!
絵本を読むことが大好きになりそうな、楽しい物語です。

かがくいひろしさんの絵本、大好き!
愛嬌のある表情がかわいく、誰でも知っている物に命を吹き込むのがとてもお上手です。
だるまちゃんとてんぐちゃん 加古里子 作 福音館書店

1967年刊行、加古里子さんのてんぐちゃんシリーズ第一弾
ちいさなだるまちゃんは、てんぐちゃんの持っているうちわが欲しくなります。
そこでおうちに帰っておおきなだるまどんに訴えます。
「てんぐちゃんのようなうちわがほしいよう」
おおきなだるまどんはたくさんのうちわを出してきてくれますが、どれもてんぐちゃんのうちわとは違います。
そこでだるまちゃんが考えたのは?
お友だちの持っているものを見て「いいな」と思う気持ち、おうちに帰ってお父さんやお母さんに訴える気持ち、どれもちょっと違うなぁという気持ち、どれも子どもらしくてほっこりします。
加古里子さんの絵本の楽しいポイントのひとつ、「たくさんのものが並んでいる絵」が存分に楽しめます。
だるまちゃんのリクエストに応えて、おおきなだるまどんが出してきたたくさんのものを、
子どもはきらきらした目でじっくり見ます。
自分だったらどれがすきかな?なんて考えるのも楽しいですよ。

たくさんのものをじっくり見るのには、幼稚園や保育園の集団よりも、
おうちのほうがより楽しいかもしれませんね。
加古里子さんの絵本はおうちに置いてほしい絵本の一つです。
しんせつなともだち ふぁんいーちゅん 作 / 村山知義 絵 福音館書店

雪がたくさん降り積もる日、こうさぎは食べるものを探しに出かけます。
かぶを二つ見つけたこうさぎは、きっとおともだちも食べるものがないだろうとおすそ分けに行きます。
ところがお友だちは留守。
こうさぎはかぶを一つ、置いて帰ります。
そこに帰ってきたお友だち。お友だちもこうさぎと同じことを考えます。
そこから優しさの連鎖が始まっていく物語。
こうさぎの優しい気持ちがどんどん広がっていく様子に心が温まります。
同じ様子の繰り返しなので、小さい子も安心して先を楽しむことができるのもポイント。

香山美子さんの「どうぞのいす」と同じで登場人物同士が出会わずに
進んでいく物語。
自分以外の人に想いを寄せる優しい気持ちがたっぷりつまっています。
おわりに

少し長いお話を楽しむことが出来るようになってきた3歳。
長めのお話でも、少しドキドキするお話でも、
繰り返しの展開がある絵本を選ぶと、安心して楽しむことが出来ます。
擬音やリズミカルなフレーズが入っている絵本を選ぶのも良いですね。
これからたくさんの物語に触れていく第一歩。
ぜひ、お子さんのお気に入りを見つけてあげてくださいね。
