「子どもに本を読んで欲しい」
「子どものうちに昔から語り継がれている名作を読んで欲しい」
という気持ちがなかなか報われず、お悩みの方も多いのではないでしょうか。

子どもの頃から読書好き。
子ども二人は「現在は」読書好き。
絵本・児童書好きが高じて自宅の絵本・児童書蔵書数1000冊以上
本嫌いではないけれど、特別好きなわけでもなかった我が子二人。
そんな子どもたちも、今はそれぞれが好きな本を楽しむ「本好き」に。
年間100冊以上読んで驚かされたこともありました。
この記事では、子どもに本を読んで欲しいと願う保護者の方に向けて、小学校高学年のお子さんが興味を持てる「背伸びしすぎない本探し」をお手伝いしたいと思っています。
全て感想付きのおすすめ本紹介です。
我が家の子どもが本好きになるまでのストーリーを紹介した記事です。併せてご覧ください。
人気のおはなし本おすすめ

くちぶえ番長 重松清 新潮文庫
今はもうおとなになったツヨシが小学生四年生の時のお話。
優等生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトが転校してきます。転校早々に学校の番長になると宣言したマコトに、みんなはびっくり。マコトを嫌う女の子たちも出てきます。
でも、小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友だち思いで、頼りになるとってもいいやつでした。ツヨシとマコト、二人が駆けぬけたたった一年間の友情物語です。
言葉遣いが優しく、分かりやすくてとても読みやすいです。
登場人物たちの葛藤は、大人も子どもも共感することばかりで、読むとほっとしたり、勇気づけられたり。小学校高学年になって自分なりの価値観が育ってきている子どもたちには、特に感じることが多く、力を与えてくれる物語です。

作者の重松清さんといえば、国語の教科書に掲載されている『カレーライス』で出会う子が多いですね。
実際我が子も、5年生の時に習い、その後重松清さんの本が読みたいと言ってこの『くちぶえ番長』を購入しましたよ。
昔はおれと同い年だった田中さんとの友情 椰月美智子 双葉文庫
小学6年生拓人が主人公。友人2人と近くの神社でスケボーをしていた時に、管理人をしている85歳の田中さんと出会います。田中さんは拓人のスケボーに興味を持ち、試しに乗ろうとして転び、右手を骨折してしまいます。
母親から、田中さんのギプスが取れるまで身の回りの世話をするように言われた拓人たち。聞き上手で優しい田中さんの人柄に次第に惹かれていき、85歳と11歳の友情が始まりました。
ある日、拓人は田中さんの部屋で自分と同い年くらいの年の田中さんの写真を見つけます。
当時の田中さんの戦争体験を聞いた拓人たちは、ある行動を起こします。
温かくてちょっと切ない。笑いどころもあるとても読みやすい物語です。田中さんの優しさを「マジで菩薩レベル」と表現するポップさも子どもに馴染みやすいですね。
小学6年生が持つ大人や世間への違和感や反抗心も描かれていて、共感をしながら読むことが出来るでしょう。85歳の田中さんの物語に触れることで視野が広がるきっかけにもなりそうです。

ぜひ、親子で読んでみて欲しい物語です。
読み聞かせをするのもおすすめですよ。
読書感想文が書きやすい物語でもあると思います。
僕とおじいちゃんと魔法の塔 香月日輪 角川文庫
小学6年生の男の子が主人公。
父母、弟、妹の5人家族の主人公は、絵に描いたような「真っ当な家庭」に育ち、父の言うことにも学校の決まりにも疑問を感じることなく過ごしてきました。だけど、最近家庭に居場所が無いような気がしてムズムズする感じがします。
そこで一人で息抜きに行った場所、それが物語の舞台となる魔法の塔。
そこで主人公が出会ったのは…主人公が生まれる前に亡くなったおじいちゃん、それもかなりヘンテコ。おまけに変なイヌも一緒。
このおじいちゃとの出会いで主人公の決まりきった生活が変わって行きますが…。
200ページ足らずの短い物語で内容に勢いがあり、あっという間に読むことが出来ます。
主人公とともに駆け抜ける爽快感が味わえます。
元々は、チャレンジキッズ5年生に連載されていたお話で加筆修正して文庫化されています。

小学校高学年になって持ち始めるおとなへの疑問や違和感、そして反抗心などが大きな軸になっています。
いわゆる「良い子」の主人公が自分の価値観を持ち始めて成長していく様子は子どもたちに勇気を与えてくれるでしょう。
保護者の方や学校の先生にも読んで欲しい物語です。
参上!ズッコケ忍者軍団 那須正幹 ポプラ社
小学校6年生の主人公の男の子、ハチベエ、モーちゃん、ハカセたちの通う小学校の子どもたちの秘密の虫とり場が、突然、他の学校の子どもたちに取られてしまいます。
秘密基地を取り返すべく立ち上がったハチベエたち。同士を集めて秘密基地に攻撃を仕掛けますが…。果たして秘密基地、ハチベエたちの行方は!?
大人気ズッコケ三人組シリーズの中の一作。
基地を取り返すべく立ち上がった子どもたちが取った作戦は、誰もがワクワクするでしょう。
「こんなこと出来たらいいな」を実行してくれるのがズッコケ三人組の魅力。破天荒な行動に夢がつまっていて自分も冒険しているような気持ちになります。

私は子どものころからズッコケ三人組シリーズの大ファン。
たくさんの作品が刊行されていますが、選ぶなら、初期~中期くらいまでのものがおすすめ。この頃の物語はどれも子ども目線の子どもファーストでワクワクしながら楽しめますよ。
うそつき王国とジェルソミーノ ジャンニ・ロダーニ 講談社文庫
生まれたときから凄まじい大声の持ち主だったジェルソミーノは、次第に祖国にいづらくなり国外へ旅立ちます。自分の声を生かして歌手になるために。しかし、国境を越えてたどり着いたのは、あべこべの言葉を使わなければ罰せられる国でした。
混乱するジェルソミーノの前に現れたのはゾッピーノという、塀の落書きから抜け出た、口がきける一匹の猫。「うそつき王国」で一人と一匹は国王たちを相手に奮闘しますが…。
作者はイタリアの有名な児童書作家さん。
生きづらさを抱えた主人公がたどり着いたうそつき王国で出会うのは、それぞれが生きづらさを抱えた人たち。
テーマには重みがありますが、陽気なイタリアの雰囲気で押しつけがましさがなく、気軽な気持ちで楽しく読める物語です。
ドリトル先生アフリカへ行く ヒュー・ロフティング 角川文庫
世界でただひとり、動物の言葉が話せるお医者さん、ドリトル先生。
その噂を聞きつけて、遠くアフリカからSOSが届きます。
「ジャングルに猿に広まる伝染病を治療してほしい」
そこで、ドリトル先生は一緒に暮らしている動物たちを伴ってジャングルを目指し出発します。
動物のことをとても大切にするお医者さんと動物たちの冒険記です。
困難に直面した時、動物たちのサポートで乗り越えていく様子にワクワクドキドキが止まりません。呑気なドリトル先生と、あぁでもない、こうでもない、と奔走する動物たちのやりとりが面白いです。動物が好きな子にはより楽しめるお話でしょう。

古いお話なので、今の時代には合わない差別的な表現が含まれますが、それについて巻末に出版社から読者へ丁寧なメッセージが掲載されています。
これを読むことも、子どもたちにとって素敵な学びになりますよ。
パスワードは、ひ・み・つ 松原秀行 講談社青い鳥文庫
主人公のマコトがある日パソコン画面で「電子探偵団」のページを見つけます。それが、ワクワクする毎日のはじまりでした。
それぞれ違う学校に通う5人の電子探偵団員が、たくさんの推理パズルを解きながら、ついには本物の事件を追うことに。
電子探偵団のメンバーは無事事件を解決することが出来るのでしょうか。
パソコン上のやりとりから始まる電子探偵団。
初めは面識の無かった団員が顏をあわせて一緒に事件解決に向かう場面はハラハラドキドキの連続です。電子探偵団と一緒に謎解きをしながら楽しめるシリーズです。
30年ほどに小学生に人気だった「ズッコケ三人組」シリーズに似たような雰囲気の作品で、多くの小学生が一緒に冒険した気分になれること間違いなしです。
そして五人がいなくなる はやみねかおる 講談社青い鳥文庫
中学生の三つ子の主人公のお隣に引っ越してきたのは名探偵。
…のはずなのだが…この自称名探偵は物忘れの名人で、自分がごはんを食べたかどうかさえ忘れる究極のマイペース人間。
夏休み。町の遊園地で次々に子どもが消える「怪人伯爵事件」が発生します。この謎を名探偵夢水清志郎は解決することが出来るのでしょうか。
ぐうたらな名探偵が事件に挑み、ひょうひょうと解決していくカッコよさが癖になる作品です。
トリックや伏線の張り方はしっかりミステリ調で、この作品をきっかけにミステリ好きになったという大人も多いでしょう。
一風どころかすべてが変わっている名探偵が主人公で、笑える場面もありつつ、シリアスに問題と向き合う場面もあって心が動かされるシリーズ作品でもあります。

児童書ですが、かなり本格的なミステリの部類に入ります。
ミステリは読み始めると結末が気になってぐんぐん読み進めてしまう、という性質があるので、最初は読み聞かせをして、興味が出てきたところで一人読みにバトンタッチする方法も良いと思います。
これまでたくさんのミステリ好きの子どもを生み出してきたシリーズ作品なので、ぜひたくさんの子に楽しんで欲しいです。
怪盗クイーンはサーカスがお好き はやみねかおる 講談社青い鳥文庫
飛行船で世界中を飛び回り、狙ったお宝を必ず手に入れる怪盗クイーン。
ところが、クイーンが狙っていた宝石が謎のサーカス団に横取りされる事態が発生します。
サーカス団の目的とは?クイーンは果たして宝石を奪い返すことが出来るのでしょうか。
20代、30代のおとなにもファンが多い怪盗クイーンシリーズ。
独自の美学をもったクイーンに夢中になる人が後を絶ちません。
猫のノミ取りに夢中になっていたかと思えば、華麗に宝を盗む姿には憧れの気持ちがつのります。
クイーンの助手のジョーカーや、敵となる探偵卿など、シリーズが進むごとに魅力的な登場人物が次々と登場するのも楽しいポイントです。

登場人物が全員魅力的で我が家の娘は、このシリーズの虜。自分でファンクラブにも入っています。
はやみねかおる先生のお話は、子ども目線、子どもファーストで押しつけがましさが全くなく、物語の楽しさを純粋に子どもたちに伝えてくれるので、おすすめです。
放課後ミステリクラブ1 金魚の泳ぐプール事件 知念実希人 ライツ社
夜の学校。プールに放たれた金魚…。プールの授業が休みになって喜ぶ子どもたち。
でも、誰がなんのために…?調べていくと違和感が次々に見つかっていきます。
ミステリクラブの三人組は、この謎を解けるのでしょうか。
児童書で初めて本屋大賞にノミネートされた親子で楽しめる本格ミステリです。
プロローグはおとなのミステリさながらの「何か起きそう!」な雰囲気が満載でドキドキ。大人向けのミステリ小説を書いている知念実希人さんが書いています。
小学生が主人公の人の死なないミステリで、登場人物のキャラクターも親しみやすく、小学生が読んでもイメージしやすい物語ばかりです。

本格的なミステリの作りですが、子どもに安心して読ませることが出来ますよ。
これから何が起きるんだろう、今何が起きているんだろう、というドキドキ感はありますが、「気持ち悪い」とか、「怖すぎる」ということは無いので安心です。
ファンタジー本のおすすめ 定番から新作まで

ティリー・ページズと魔法の図書館 アナ・ジェームズ 文響社
ロンドンのページズ書店に祖父母と暮らす、本が大好きな女の子ティリーが主人公です。
ある日、ティリーの前に現れた女の子は…赤毛のアンのアン・シャーリー。アンに連れられて本の中に入り込んだティリー。
なぜ、自分は本の中に入れたのか?自分が赤ちゃんの頃に行方不明になったママと関係が!?
ファンタジーとミステリが融合されたようなお話で、夢がありとてもワクワクします。
名作に出てくる登場人物が次々に登場するのも、面白いポイントです。
主人公と一緒に本の世界を旅しながら、湧き上がってくる謎に対面するドキドキが味わえて楽しいお話です。結末には驚かされること間違いなしの物語で、すぐに続きを読みたくなるでしょう。

華やかでかわいい表紙に惹かれて読んだ我が子。
読後にこの作品に出てくる名作が気になり、その原作を読んだりアニメを見たりしていました。世界が広がるきっかけになった一冊です。
すきまのおともだちたち 江國香織 集英社文庫
新聞社に勤める主人公が、仕事先でふとした瞬間、見慣れない景色の中にいることに気が付きます。
そこで出会った不思議な女の子。喋るお皿に喋る動物。
どこまで行っても元の世界に繋がりそうもない世界で、主人公と女の子の間に生まれた友情の物語です。
とにかくかわいくて優しくてあったかい物語です。
『不思議の国のアリス』をずっとずっと淡く優しくしたような世界感で常に不思議な感覚にとらわれます。空想好きの子どもが頭の中に思い描くようなファンタジーの世界で起きる出来事に、ワクワクしたり幸せな気持ちになったりする素敵な物語です。

字が大きめで時折ある挿絵もとてもかわいいです。
大人が読んでも子どもが読んでも楽しい物語。
娘は小学校6年生の時に読んで、とても気に入っていました。
小説アナと雪の女王 影のひそむ森 監修ウォルト・ディズニー・ジャパン 角川文庫
『アナと雪の女王』から3年。
アレンデールに真っ白病という病気が蔓延します。その解決に奔走するエルサとアナ。
そんな中、とある場所で見つけた古い本に書かれている呪文を読んでしまったアナ。すると…。
エルサとアナはアレンデールを救えるのでしょうか?『アナと雪の女王2』に繋がっていく物語です。
会話のテンポや世界観が映画と同じで全く違和感なく楽しめます。
『アナ雪2』を見るうえでも、知ってるとより楽しい結末を迎えていますので、映画のファンのお子さんにぜひ読んで欲しい物語です。
しかしながら…想像以上に怖いので、読むのは高学年、かつ怖い物語を読んでも引きずらない子が良いと思います。残忍で凄惨な怖さではなく、気味が悪くドキドキする怖さなので子どもが読んでも問題はありませんが、怖がりのお子さんは気を付けてあげてくださいね。

娘は小6の時に読みました。
『アナと雪の女王』の映画が大好きだったので、映画の内容を更に深く楽しむためにも読んで良かったそうです。怖がりながらの読書でしたが、同時にとても楽しかったようで、常にキャーキャー言いながら楽しそうに読んでいました。
魔女の宅急便 角野栄子 角川文庫
人間と魔女が結婚をして生まれた子どもが女の子の場合、魔女として生きていく決心がついたら13歳の年の満月の夜にひとり立ちをします。
ひとり立ちをすると、自分の家を離れて魔女がまだいない町や村を探し、たった一人で暮らし始めます。
この物語は魔女の女の子キキのひとり立ち前から、その後1年間の暮らしと成長を描いています。
ジブリアニメでもおなじみ『魔女の宅急便』の原作小説です。
映画のキキ、我慢強くて物わかりが良く、健気で、見ていてちょっぴり苦しくなる方はいませんか?
原作のキキは、もっと等身大の女の子で、愚痴をこぼしたり、八つ当たりをしちゃったり…。
もちろん、素直で一所懸命な女の子だけれど、ちょっとほっとする一面を見せてくれます。
恋愛や友情に対する葛藤も描かれていて共感しながら楽しむことが出来ますよ。
チョコレート工場の秘密 ロアルド・ダール 評論社
とても貧しい家に暮らす主人公チャーリーが住んでいる町に、世界一大きくて有名なチョコレート工場があります。その持ち主はウィリー・ワンカ。働く人たちの姿を誰も見たことがないという謎の工場です。
ある時、工場に5人の子どもが招待されるニュースが駆け巡ります。でも、その招待状はチョコレートに同封されていると言います。貧しく、一年に一度の誕生日にしかチョコレートを手にすることが出来ないチャーリーは…?
映画『チャーリーとチョコレート工場』の原作小説です。
文体が簡単で優しく、読みやすい物語です。映画ほどの奇抜さはなく、万人が楽しめる雰囲気なのも嬉しいですね。
チョコレートの川や、チョコレートをふわふわにかき混ぜる滝…そんな光景を想像するのもとても楽しいです。こんな世界があったらいいな、とワクワクすること間違いなしです。
シェーラ姫の冒険 村山早紀 童心社
悪の魔法使いによって、すべてを石に変えられてしまったシェーラザード国。この魔法を解き祖国を救うために、怪力の姫君シェーラと魔法使いの少年ファリードが立ち上がります。元泥棒の少年ハイルと出会い仲間になり、伝説の魔法の杖を求めて七つの魔法の宝石を探す旅に出ることに。子どもたちは、王国を救うことが出来るのでしょうか。
そしてその冒険の先に得たものとは。
壮大なファンタジーで手に汗握る展開続きの物語です。
王国を救うという大きな使命を背負いながら、人間関係を主軸にしたストーリーで、心が動かされます。様々な性格や立場の登場人物がいて、誰かを好きになったり、共感したりしながら夢中で楽しめるでしょう。

我が家では読み聞かせから始めました。
冒頭の「お姫様が怪力」という設定で子どもたちは大笑い。一瞬で気持ちを掴まれていました。厚い本で、見た目で子どもが気後れしてしまう場合は、読み聞かせからスタートするのがおすすめです。
霧のむこうのふしぎな町 柏葉幸子 講談社
夏休みにお父さんのすすめで遠くまで旅に出た小学6年生のリナ。ところがお父さんが言っていた「霧の町」は誰に聞いても見つかりません。そんな時、風が吹いてきて…。リナの目に移った光景とは…!
不思議な町の生活で孤軍奮闘し、そこに生きる不思議な人たちとの交流で成長した、リナのひと夏の不思議な物語。
ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に影響を与えたと言われており、「耳をすませば」にも登場している物語です。
親元を離れて不思議な町に来て最初は戸惑いながらも、周りの人たちの優しさを受けて成長していくリナの姿に勇気をもらえます。
読んでいると霧の町の想像が広がり、ずっと夢の世界にいるような感覚になります。子どもが想像の世界でたくさん遊べる物語です。
ホビットの冒険 トールキン 岩波書店
ひっこみ思案で気のいいホビット小人ビルボが、思いがけない旅に出る雄大な冒険物語です。魔法使いガンダルフのたくみな誘いにのせられて、13人のドワーフとともに旅立ったビルボ。
ドワーフたちの土地と宝物を取り返すために、数々の困難に立ち向かいます。また、途中ではぐれてしまったビルボが出会ったものとは…。
『指輪物語』に繋がるお話で、指輪物語が一般向けに書かれたのに対して、この『ホビットの冒険』は児童書として書かれています。そのため、指輪物語のようにドキドキしたり絶望したりする時間が長すぎることなく、展開も早めで子どもが読みやすいように構成されています。

『指輪物語』につながる大事な伏線が含まれているお話なので、映画『ロード・オブ・ザ・リング』が好きな子はより楽しめるでしょう。
ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス ミヒャエル・エンデ 小学館
暗黒の中世のとある真夜中。嵐の中を進むあやつり人形劇団の馬車から少年クニルプスが姿を消します。なんと彼が向かった先は、誰もがおそれる大悪党、盗賊騎士ロドリゴ・ラウバインの城でした。
ロドリゴの従者になりたいクニルプスと、謎の盗賊騎士ロドリゴ、かしこいオウムにおてんばなお姫様に財宝好きな竜。それぞれが交差しあいながら人形劇のように謎めく糸にあやつられていきます。
『モモ』や『はてしない物語』の著者ミヒャエル・エンデが3章まで書き遺した物語をヴィーラント・フロイトが引継ぎ完成させた物語です。
登場人物の個性が豊かで読んでいて飽きません。先入観がひっくり返されたり、くすっと笑えたり。主人公と一緒に大冒険をしている気分になれますよ。

『モモ』や『はてしない物語』は、児童書の名作として子どものおすすめとしてよく目にしますが、少し難解な部分があります。(特に『はてしない物語』。)この物語は、その二つの物語よりずっと分かりやすく読みやすいので、エンデ作品の入り口としておすすめです。読み聞かせから始めるのも良いでしょう。
ナルニア国物語 ライオンと魔女と洋服だんす C・S・ルイス 角川つばさ文庫
四人の兄妹が両親と離れ、田舎の風がわりな教授の家に預けられたところから物語が始まります。
家の中を探検してると、末っ子のルーシーが大きな洋服だんすを見つけます。
たんすに入ったルーシーが進んでいくと…なんとたんすの奥は悪い魔女が支配する魔法の国ナルニアに繋がっていました。
命がけの冒険をへて、四人は不思議なライオンアスランと共にナルニア国を救うため、魔女に戦いを挑みます。
原文に近いニュアンスでの日本語訳がされているそうで、非常に読みやすいです。
挿絵がかわいらしく、冒頭にはマンガであらすじが描かれているため、親しみやすいですね。
全7巻あり、主人公がそれぞれ違うので、自分の好みの物語を見つけるのも楽しいです。
色々なことに先入観のない子どものうちに読んで、自由にナルニア国を旅してほしい、そんな物語です。
クレヨン王国の十二か月 福永令三 講談社青い鳥文庫
大みそかの夜、主人公ユカが目を覚ましぼんやりと明るい方を見ると…なんと12本のクレヨンたちが会議を開いていました。
どうやらクレヨン王国の王さまが、王妃の悪い癖が治らないうちは帰らない、といって行方をくらましたらしいのです。ついつい会議に口を挟んでしまったユカ。そこに王妃が現れて…。
王妃とユカは一緒に王さまを探す十二か月の旅に出ます。
普通の女の子がクレヨン王国という世界に入って行く瞬間がなんとも不思議で何度読んでもわくわくします。
十二か月を旅する王妃とユカの衣装がどんどん変わってくところや、それぞれの場所で出会う人たちの不思議さにも心が奪われます。

40年以上前に刊行されていたクレヨン王国シリーズの中で特に人気のあった作品が、新しいイラストで出版されています。元のイラストは淡く優しく描かれている分、想像が広がりとても素敵でしたが、こちらの新しいイラストも派手過ぎず親しみやすい可愛らしさに溢れていますね。
エッセイ・ノンフィクション本おすすめ

続・窓ぎわのトットちゃん 黒柳徹子 講談社
1981年に刊行されベストセラーになった『窓ぎわのトットちゃん』の続編。
前作『窓ぎわのトットちゃん』が、黒柳さんが小学1年生のときに転校した東京の学校で出会った先生や友人たちとの思い出が描かれているのに対して、本作は小学生になる少し前、戦前直前の時代からNHK専属女優になり活躍されるまでの時代が記されています。
壮絶な戦時下でもたくましく生きた様子が手に取るように感じられる作品です。

戦争中の壮絶な体験、しなやかで強いお母さん、自分を咲かせるために一生懸命だったトットちゃん。
読んでいると、勇気と自信が湧いてきます。自分と同じ年頃のトットちゃんがどうやって生き抜いたのか、子どもたちにとっても感じることが多く、視野の広がる作品となるでしょう。
Amazonが提供するオーディオブックAudible(オーディブル)では、黒柳徹子さんご本人の声で朗読を聴くことが出来ます。ご興味のある方はこちらから覗いてみてくださいね。
Audible(オーディブル)公式サイトはこちらあのころ さくらももこ 集英社文庫
てきやの話術につられて買ってしまった「まほうカード」のからくり。ガラクタの処方に困り果てた家庭訪問の思い出。毎年8月29日から始まる家族総出の夏休みの宿題との格闘。
作者のさくらももこさんが「まる子」だったあの頃をふりかえる、懐かしさと笑いでいっぱいのエッセイです。
どれも小学生の日常生活のお話で、想像がしやすく読みやすい。学校の朝読書の時間にもおすすめです。

子ども向けの本ではありませんが、小学校高学年で「冗談」を楽しめる子ならば楽しく読めるでしょう。我が子は6年生の時にさくらももこさんのエッセイにはまり、子ども時代のものだけでなく、大人時代のものも読破しました。
アニメや漫画で「ちびまるこちゃん」を楽しんでいる子にもおすすめです。
まなの本棚 芦田愛菜 小学館
テレビで活躍中の芦田愛菜さんが中学生の時に書いた「本の本」。
愛菜さんが大好きな本を、「小学生で夢中になった児童書」「世界を広げた海外文学」「熱い友情やスポ根大好き」など、ジャンルごとに分けて紹介してくれています。
愛菜さんが実際に小中学生で読んでいた本なので、同じ年頃の子の本選びにとても参考になりますよ。

愛菜さんが紹介している本の中に自分も好きな本があると、友だちと好きな本について語り合っているような気持ちになり嬉しいです。
すでに本が大好きな子の「読書友だち」にもなるような素敵な一冊です。
おわりに

小学校高学年になると、読める本のジャンルや幅が一気に広がります。
絵本、児童書だけでなく、内容を選べば、一般向けの小説も楽しむことが出来ます。
課題図書になったり、一般的におすすめされたりする児童書はもちろんどれも良書なのですが、実際子どもが「読んでみたい」という気持ちにならないことも多いと思います。
どんなに良い物語でも、読み始めなければ何も始まりません。
まずは、あまり背伸びをしすぎずにお子さんの興味がある分野の物語を選んでみてください。
そして、いきなり一人で読ませるのではなく、最初は興味を持つところまで読み聞かせる、ということも上手くいく方法です。
また、オーディオブックサービスを利用するのもおすすめです。親子で聴く時間を設けるだけでも、物語に触れるきっかけ作りになります。
どんな方法でも、背伸びしすぎず「子どもが物語に触れる」ことを目指していきましょう。
Amazonが提供するオーディオブックAudible(オーディブル)の小中学生の利用について説明しています。小中学生におすすめのタイトル紹介もありますよ。どうぞ併せてご覧ください。

