自分の身の回りのことが少しずつ自分で出来るようになって、自信がついてくる3歳。
赤ちゃんから子どもへ、心も体もぐんと成長するこの時期。
成長に伴って読める絵本のバリエーションが増えてきます。
「そろそろ赤ちゃん絵本じゃ物足りないかな?」
「少し長めの物語に興味が出てきたみたいだけど、どれくらいの長さが読めるんだろう」
「絵本がたくさんありすぎて選び方がわからない!」

そんな方に向けて、
元幼稚園教諭で二児の母、自身も本が大好きな著者が
3歳児の絵本の選び方を解説します。
3歳児のおすすめ絵本を知りたい方はこちらの記事も参考にしてくださいね。
私が実際に幼稚園の子や我が子に読んで良かった本を紹介しています。
3歳の子どもの特徴
言葉が豊かになり、周りの環境との関わりが増えてくる3歳。
好奇心や探求心も旺盛になり、自分でやりたい気持ちが大きくなります。
一方で、まだまだ甘えたい気持ちもたくさんあり、感情が行ったり来たりを繰り返します。
食事やお風呂、トイレなど基本的な生活習慣が身につき、自分のことを自分でする力がついてきました。
お友だちとの関わりも増え、自分の気持ちと相手の気持ちが違うことを知る機会がぐんと増えてきます。
食事のマナーや集団生活のルールなど社会で生きていくうえで必要なスキルを獲得し始めるのがこの頃です。
3歳の子どもが読める絵本はどんな絵本?

日常生活を元にした物語
食事、トイレ、歯磨き、お風呂など日常生活の流れがすっかり定着してきた3歳。
自分がいつもしていることが題材になった物語絵本は想像がしやすく、おもしろさやドキドキを存分に味わうことができます。
例えば「はみがきをすること」が描かれた絵本から、「はみがきをしている誰か」が描かれた絵本を楽しめるようになります。
マナーやルールの描かれた物語
自分とパパ・ママなど大好きな人だけの世界から、自分以外のお友だちの気持ちを感じる世界に入ってきた3歳。
お友だちと関わる中で「良い」「悪い」「好き」「嫌い」など様々な感情を経験します。
絵本の登場人物を見て、「これは良くないよね」とか、「この人はいい人だね」とか客観的にジャッジするようになります。

例えば、昔話によく出てくる隣に住むいじわるおじいさんを見て
やっていることの善悪がついてくる、などです。
客観的に見て自分の思う「良い」「悪い」が出てきて、
その視点からも物語を楽しむことが出来るようになります。
少し長めの物語
これまでの赤ちゃん絵本から、少し長めの物語も楽しめるようになります。
自分の気持ちが行ったり来たりする経験の中で、絵本の登場人物の少し複雑な想いも
感じることができるようになるからです。
自分以外の誰かに共感したり、自分を投影したりして絵本の世界を楽しむことが出来るようになります。
3歳の子どもの絵本の選び方
身の回りのものや生活に関わるものなどイメージしやすいものを選ぶ
5歳くらいになると「ジャックと豆の木」「浦島太郎」「エルマーとりゅう」など、実際の生活からかけ離れた物語でもイメージを膨らませて楽しむことができますが、3歳は出来るだけ自分に身近なテーマから選んであげましょう。
散歩、かけっこなど自分がしていることはイメージがつきやすく、自分を投影しながら楽しむことが出来るでしょう。
自分の身の回りのことに自信を持って関われるようになってきたので、食事やトイレ、お風呂など生活習慣が関わっているものもおススメです。
おすすめ絵本
ねえ どっちがすき? 安江リエ 文 / 降矢奈々 絵 福音館書店
「ねえ どっちがすき?」
と、きつねと男の子のやりとりで進む絵本です。
目玉焼きと卵焼き、ぶらんこと滑り台など、子どもたちに身近なものばかりが比べられています。
「どっちが好きかな?」と自分で考えて絵本の世界に参加することが出来ます。
おうちの人やお友だちの好みを聞いて自分とは違うことも感じられる機会になりますね。

「こっちが好き!」とすぐに決められる場合もあれば、「どっちもいいなぁ」と悩むことも。
自分と相手の違いを感じる機会になるのはもちろん、白黒つかないこと気持ちがあることを知る機会にもなりますね。
わにさんどきっ はいしゃさんどきっ 五味太郎 作 偕成社
虫歯になってしまったわにさんと人間の歯医者さんのお話。
わにさんが歯医者さんへ行きます。
「こわいなぁ」
わにさんの心の声かと思ったら…なんと歯医者さんの声でもありました。
最初から最後まで同じ言葉が2回ずつ繰り返されるこの絵本。
実は虫歯の治療が怖いわにさんと、わにさんが怖い歯医者さんの言葉でした。
同じ言葉ながら、それぞれの感情を表しているのが面白いポイント。
最初はわにさんの立場に立っていた子どもがある瞬間に歯医者さんの気持ちにも気が付きます。
そこからは、どちらも応援したくなり思わず笑いがこみあげます。
歯磨き、虫歯というテーマはなじみがあり、子どもは想像や感情移入がしやすいです。
かつ両者の立場や感情の違いを知った上での言葉遊びの面白さが盛りだくさんにつまった楽しい物語です。
おにぎりくんがね・・ とよたかずひこ 作 童心社
「にぎにぎ」「にぎにぎ」「にぎにぎ」
と三人のおにぎりくんが自らおにぎりをにぎっていきます。
誰かににぎられるのではなく、自分で具を「パクっ」と口に入れ、自分で海苔にまかれちゃう姿がかわいい。
上手にできた具入りおにぎりくんが嬉しくなって踊り始めて…。
いつも食べているおにぎりに想いを馳せられるとてもかわいいお話です。
擬音が使われているものを選ぶ
少し長めの物語が楽しめるようになったとはいえ、集中が続かないのも3歳。
「ずるずり ずるずり」
「もじゃらんこ もじゃらんこ」
などの擬音は子どもはあっという間に覚えます。
覚えて一緒に口ずさみながら楽しむことが出来るため、集中が途切れにくいです。

擬音にたくさん触れることで、自分の感情や動作、情景を表現するための語彙力増加にも繋がりますよ。
おすすめ絵本
わにわにのおふろ 小風さち 文 / 山口マオ 絵 福音館書店
「ぐにっ ぐなっ」
「ずるずり ずるずり」
など動作が擬音で表現されていて面白い。
子どもはあっという間に覚えて一緒に口ずさみ楽しみます。
子ども自身の擬音の表現の幅が広がります。
もじゃらんこ 岸田衿子 文 / 古矢一穂 絵 福音館書店
「もじゃもじゃ じゃらじゃら」
もじゃらんこは3匹の小さな毛虫。
「どこいくの?」と聞いても「わからんわからん」。
3匹の毛虫がお散歩する様子をかわいい擬音で表現しています。
いつもはちょっぴり怖い毛虫もかわいく感じる、子どもに人気の絵本です。
はっきよい畑場所 かがくいひろし 作 講談社
野菜たちのおすもう畑場所が開幕!
かわむけん出身かれえ部屋たまねぎのたまね錦、しましまけん出身でざあと部屋すいかのすい海など、
個性豊かなおすもうさんが大集合!
「ずん」「ぱらぱら」「ちーん」「びょーん」
野菜のおすもうさんの動きが、楽しい擬音とかわいいイラストで表現されています。
かがくいひろしさんが生み出すかわいくてユーモアあふれる野菜たちの取り組みに親子で夢中になること間違いなし!
言葉のリズムが心地よいものを選ぶ
少し長い物語を集中して楽しんで欲しい場合は、あっという間に覚えて口ずさめるほど、
言葉のリズムが心地よいものやおもしろいものを選ぶと良いでしょう。
「ラララン、ロロロン、ランロンロン」
「あったとさ、あったとさ」
などの特徴的で心地よいフレーズは音楽のように体に染み込んできます。
覚えて一緒に口ずさみながら楽しむことが出来るため、集中が途切れにくくおすすめです。
おすすめ絵本
わたしのワンピース にしまきかやこ 作 こぐま社
ある日、空から真っ白な切れが落ちてきます。
うさぎさんは、その布でワンピースを作ることに。
出来たワンピースでお散歩しているとワンピースが素敵な模様に大変身!
「ミシンカタカタ、ミシンカタカタ」
「ラララン、ロロロン、ランロンロン」
とかわいいリズムをうさぎさんと一緒に口ずさみたくなる物語。
色彩がとても優しく鮮やかで読んでいて明るい気持ちになります。
きょだいなきょだいな 長谷川摂子 作 / 降矢なな 絵 福音館書店
1988年に月刊絵本として刊行されました。
「あったとさ あったとさ きょだいな〇〇あったとさ」
が繰り返されるこの絵本。
言葉のリズムが良く、歌を歌っているかのようです。
リズムが良いうえに、出てくるきょだいなものが子ども心をくすぐります。
こんなきょだいな〇〇があったら、どんなことが出来るかな?なんて思いをはせるのが楽しい。
イラストも魅力的で、言葉のパワーを後押ししてくれています。

幼稚園ではすぐに大合唱になります。
溢れんばかりのパワーと楽しさがつまった絵本です。
ねられんねられんかぼちゃのこ やぎゅうげんいちろう 作 福音館書店
おつきさまがかぼちゃのこに言います。
「はやく ねなさーい」
けれど、かぼちゃのこは…
「ねられん ねられん あたまにかえるさんがのっていては ねられん ねられん」
おつきさまとねられないかぼちゃのこのやりとりがリズムよく描かれています。
寝る時間になってもまだ寝たくない子どもの気持ちが手に取るように感じられ、
愛おしさに溢れた絵本です。
寝られないかぼちゃのこの最後の場面も愛おしさ、まんてん。
ぜひ、寝る前に親子で読んで欲しい一冊です。
おおきなかぶ A・トルストイ 再話 / 内田莉莎子 訳 / 佐藤忠良 絵 福音館書店
「うんとこしょ どっこいしょ」
「まだまだかぶはぬけません」
「いぬはねこをよんできました」
「〇〇が〇〇をひっぱって…」
楽しいリズムとフレーズが楽しい!
登場人物たちの「うんとこしょ どっこいしょ」を一緒に口ずさんで、一緒にかぶを抜いているような気持になります。
やっとかぶが抜けたときの喜びと安堵を感じられる臨場感溢れる物語です。

とにかく言葉のリズムが楽しい物語なので子どもはあっという間に覚えます。
幼稚園では覚えたフレーズを使ってお友だちや先生と「おおきなかぶごっこ」に発展することも。
おうちでもパパ・ママや、おじいちゃん、おばあちゃん、ペット、ぬいぐるみなどと遊びに発展することがありそうですね!
繰り返しで構成されていて安心感のある物語を選ぶ
「繰り返し」が無い絵本だとどうなる?
物語性のある絵本を楽しめるようになってきた3歳ですが、先の見通しが立たない物語を読むのは大変です。
例えば以下のようなことが考えられます。
- 集中が持たない
- 先が不安で読み進められない
ある程度の年齢を超えると、
先がどうなるか分からないというのは、読書でも映画鑑賞でもエンターテインメントを楽しむ醍醐味ですよね。
反対に言えば、先が見通せる本や映画は魅力的ではありません。
3歳の場合はどうでしょう。
集中力には限界があります。
終わりが見えていることで安心して待ったり楽しんだりすることが出来ます。

「ジャックと豆の木」はとても楽しい物語ですが、冒頭から最後までドキドキハラハラしっぱなしです。
ジャックはどこに行くのか、巨人の元から無事に帰って来られるのか、そのドキドキやハラハラの連続に3歳はまだ耐えられません。
「繰り返し」の絵本の良さ
繰り返される展開に子どもは安心感を持ちます。
子どものアニメや特撮などのお決まりの展開が、小さい子にはちょうど良いのと同じです。
次に起きることが何となく分かるから安心してページをめくることが出来、
安心できる結末が待っているからちょっとドキドキする物語も受け入れることが出来ます。
また、「予想と違った!」という楽しみ方も出来るようになってくるのもこの時期。
安心感のある繰り返しの中で、「次はどうくるかな?」と先を楽しみにする『読書の醍醐味』を味わえるようになります。
繰り返しの展開で先が見通せるからこそ、子どもは安心して絵本の世界を楽しむことができます。
おすすめ絵本
てぶくろ ウクライナ民謡 エウゲーニー・M・ラチョフ 絵 / うちだりさこ 訳
おじいさんが森の中に落とした片方の手袋にねずみが住み始めます。
そこに次々と動物たちがやってきて、手袋はどんどんパンパンに。
もうはじけてしまいそうな手袋。
最後には大きなくままでやってきて…。
最初はねずみだけだった手袋のおうちに一匹ずつ動物が増えていく「繰り返し」の物語です。
「次は誰が来るのかな?」とワクワクドキドキ。
次々とやってくる動物のちょっぴり変わった名前や、少しずつ変化していく手袋のおうちの様子も面白い。
繰り返しながら、次第にパンパンになっていく手袋と次第に体が大きくなっていく新メンバーの動物に、「さすがに次は無理じゃないかな?」なんて予想がつくのも繰り返しの絵本の面白いところです。

幼稚園では、最後に大きなくまがやって来た時に
「ずこーっ!」「やっぱりー!」と一人一人が自分の予想との差を楽しんでいる姿が見られました。
先の予想をつけられるようになってきた3歳ならではの楽しみ方ですね。
ひよこはにげます 五味太郎 作 福音館書店
タイトル通り、ひよこが逃げるお話。
ひよこの3きょうだいがおうちから逃げます。
雨が降っても、大きな鳥が見えても、ずっと逃げます。
「〇〇で にげます」
の繰り返しでひよこたちの大冒険が描かれています。
シンプルな言葉なのに、絵を見るだけでひよこのワクワクやドキドキが伝わるのが素敵なポイント。
「次はどこに逃げるのかな」「次はどうやって逃げるのかな」
と楽しみにページをめくることが出来ます。
予想外の逃げ方におとなも子どももついつい笑ってしまいます。
もりのなか マリー・ホール・エッツ 作 / まさきるりこ 訳
アメリカの作家エッツによる絵本で、1963年の刊行から60年以上もの間多くの子どもたちに愛されている名作絵本です。
ある日、ぼくは紙で作った帽子を被り、新しいラッパを持って森へ散歩に出掛けます。
そこで出会ったのがおおきならいおん。
ぼくのラッパで目を覚ましたらいおんは「ついていっていいかい?」と聞きます。
らいおんは髪をとかすと、ぼくの散歩についてきました。
こうしてぼくは、森の中を散歩します。
その中で出会う動物たちが次々とぼくの散歩についてくる。
どんどん増えていく動物たちとぼくの愉快なさんぽの様子に心が躍ります。
そして散歩の終わりに待つものとは…。
ぼくが森の中で動物に出会い、動物がぼくの散歩についてくるという繰り返しの物語。
動物たちの個性が豊かで、次はどんな動物がどんな風についてくるんだろうという興味がわきます。
モノトーンでさみしい印象を持つかもしれませんが、繰り返しの展開に安心感があり、すぐに物語の世界に入り込むことが出来ます。
モノトーンで手に取りづらい絵本かもしれませんが、
モノトーンだからこそ一人一人の子どもが想像の中で豊かな色彩に溢れた物語にすることが出来ます。
しんせつなともだち ふぁんいーちゅん 作 / 村山知義 絵 福音館書店
雪がたくさん降り積もる日、こうさぎは食べるものを探しに出かけます。
かぶを二つ見つけたこうさぎは、きっとおともだちも食べるものがないだろうとおすそ分けに行きます。
ところがお友だちは留守。
こうさぎはかぶを一つ、置いて帰ります。
そこに帰ってきたお友だち。お友だちもこうさぎと同じことを考えます。
そこから優しさの連鎖が始まっていく物語。
こうさぎの優しい気持ちがどんどん広がっていく様子に心が温まります。
同じ展開の繰り返しなので、安心して先を楽しむことができるのがポイント。
決して予想を裏切らない繰り返しの展開にホッとします。
寝る前の読み聞かせにもおすすめ。
おわりに

成長とともに絵本の世界もぐんと広がる3歳。
自分の経験をもとに、登場人物に共感したり応援したり豊かな想いを感じるようになります。
絵本の登場人物を見て偉そうに「良い」「悪い」と言う姿を見ると、「あなたも出来ていないのに」なんて突っ込みたくなることもあるかもしれません。
でもぜひ、突っ込むことなく見守ってあげてください。
自分の経験をもとに物語を楽しめるようになってきても、まだ自分を客観視する力はありません。
人から自分がどう見られているのかを分かるようになって自分を制御できるようになるのはもっと先です。
今は絵本の登場人物に共感したり、時には非難したり、登場人物になりきって物語の世界に入り込んだりして絵本を楽しむ子どもを見守ってください。
物語の楽しさを知ることは、この先読書が好きになることにも繋がっていきます。
そのスタートを安心して楽しく切れるように、この時期の子どもに合った絵本を探してみてくださいね。

子どもの成長は個人差が大きいです。
3歳のおおまかな発達を記し絵本の選び方を解説しましたが、全ての子が当てはまるわけではありません。
お子さんに合わせた無理のない絵本選びをしてください。
パパ・ママも子どもも楽しく読める絵本が一番いい絵本です。
どうぞ『絵本と仲良く』なってくださいね。
3歳の子どもにおすすめの本を17冊紹介しています。
実際に幼稚園や我が子の育児で読んだおすすめばかりです。
どうぞご覧ください。
